人工内耳
聞こえない・聞こえにくい子どもの早期支援体制について
私たちは、聞こえない聞こえにくい子どもの新生児聴覚スクリーニングや出生 後から早期の療育・教育のための体制について関心が寄せられ、より良い方向を目 指した議論が重ねられていることについて、大変ありがたく、また喜ばしいことだ と考えています。
しかし、この議論が一つの限られた方向に向いてしまわないかと危惧しています。今回の議論や取り組みが真に子どもたちや社会のためになるよう願ってやみません。具体的には、手話言語が排除されてしまうことへの懸念です。手話言語の獲得と 聴覚活用による日本語の獲得は、本来競合するものではなく 、両立していくもので す。
このことについては、世界ろう連盟( WFD )の見解(註1)を 妥当だと考えます。 両方を目指すメリットや、選択の自由や権利(註2)という観点からもどちらか一 方の選択肢しかないような状況は作ってはならないと考えます。(註3)実践面でも 手話言語と日本語獲得の道筋の成果が実際に示されています。(註4)
ろう者はもとより 、 人工内耳装用者も含む難聴者にとっても 、 手話言語は、生き生 きとしたコミュニケーション、豊かな人生のために非常に大切なものであることは、 多くの当事者が感じていることです 。(註5)また、数多くの自治体が制定している 手話言語条例は当事者の願いと共生の理念の実現を目指しています。 聞こえない人・聞こえにくい人など多様な人たちが自分らしく生き、社会に貢献 しつつ繋がり、共に生きる社会を作るために、手話言語と聴覚活用、日本語の獲得 を促進できる総合的な療育、教育体制の構築を強く求めます。
註1「ろう児の言語権に関する WFD の方針説明書」(全日本ろうあ連盟試訳)
註2「障害者の権利に関する条約」
註3「小児人工内耳適応基準( 2014 )」 日本耳鼻咽喉科学 会 (前略・・・また、人工内耳が音声コミュニケーションを用いる場合の選択である以上、手話などの音声を用いないコミュニケーションの選択についても可能な限りの情報提供が行われるべきである。)
註4「子どもとママと担当者と3年5か月の軌跡」ろう教育を考える全国協議会
註5「全日本ろうあ連盟の人工内耳に対する見解」
<全日本ろうあ連盟の人工内耳に対する見解>